2008年02月23日(土)

イージス艦と清徳丸の衝突事故。証言・状況のまとめ

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この記事について

この記事は、イージス艦と漁船の衝突事故について、 衝突に至る経緯・証言・状況などを総合的にまとめたものです。 情報源は主に-読売新聞毎日新聞朝日新聞-などの各新聞社の記事を参照し編集しています。 事実誤認や誤った記載などがありましたらコメントで指摘して頂けると助かります。このエントリーは新たな情報が確認され次第、随時記述の修正・追加を行っていきます。
最終更新 2008年2月27日17時20分

事故概要

イージス艦清徳丸事故現場 事故は2月19日午前4時7分頃、千葉県房総半島野島崎南42キロ沖の太平洋上で起きた。海上自衛隊が保有するイージス艦「あたご」と新勝浦市漁協(千葉県勝浦市)所属の漁船「清徳丸」が衝突した。

この衝突で、清徳丸に乗っていた吉清(きちせい)治夫さん(58)と哲大(てつひろ)さん(23)が行方不明となっている。現在も捜索が続いているが親子は見つかっていない。

船艇について

イージス艦 あたご

イージス艦あたご

イージス艦あたご
(画像 Wikipediaから)

イージス艦とは対空戦闘能力に優れた「イージスシステム」を搭載した船艇を指す。日本の海上における防空の要となっており、日本は5隻を有する。その中でも「あたご」は全長165メートル、幅21メートル、乗員は約300人、排水量7750トンと最大級の船艇である。今月6日に米国ハワイ沖から日本へ向かい、19日に横須賀港に入港する予定だった。

清徳丸

全長約12メートル、7・3トンの漁船。19日午前2時、僚船の「金平丸」など7隻と川津港を出港。伊豆大島沖でマグロの餌となるサバを釣って漁場の八丈島沖に向かう計画で、同日午後9〜10時に帰港を予定していた。事故当時漁をしていたかは不明。

事故当時の天候

北北東の風約7メートル。波の高さは約0・5メートル。視界は良好だった。

今回の事件に関連する海上における法など

2隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船を右げん側に見る動力船は、当該他の動力船の進路を避けなければならない。この場合において、他の動力船の進路を避けなければならない動力船は、やむを得ない場合を除き、当該他の動力船の船首方向を横切つてはならない。
(海上衝突予防法 第15条)

浦安マリーナ運航要綱

※清徳丸などが所属する千葉県の艇置場使用契約を締結した艇が遵守しなければならない事項。

第8条 航行は全て安全航行を旨とし、艇長は特に、次の各号に留意しなければならない。

  1. 航行中は、気象及び海象の状況に十分注意すること
  2. 右側航行、右側優先の原則を励行すること
  3. 大型船の航行時には、停船・徐行又は進路を避ける等して、絶対に接近しないようにし、大型船優先を励行すること
  4. 港則法区域内においては、他の船舶に危険を及ぼさないような速力で航行し、他の船舶の進路を避けなければならない。また、帆船にあっては帆を滅じて航行しなければならない
  5. 帆船が機帆走する場合は必ず海上衝突予防法に定められた形象物を掲げること
  6. 浦賀水道航路及び中ノ瀬航路付近を航行する場合、航路内の航行を避け、かつ、船舶交通の流れを疎外しないように帆走は極力避けて航行すること

(浦安マリーナ運航要綱 注:PDFファイル)

事故の時系列と証言

19日午前
2時頃

清徳丸ら7隻の漁船が川津港を出港。

イージス艦あたご、海自横須賀基地に向けて進行中。

3時45分

4時に行われる当直交代に備え、45分から10分間の引き継ぎが行われた。この時、当直士官は前任の士官から「針路前方に漁船群が存在する」と報告を受けたが、新しく配置についたレーダー員や見張り員に適切な指示を出さなかった。

3時55分

あたごの艦橋の右に配置された見張り員が漁船2隻の灯火を視認。この情報を艦橋内に伝えていたかは不明。
一隻は船体左側にある赤い灯火と中央上部にある白いマスト灯を確認しており、清徳丸と思われる。見張り員は「相手が避けると思った」「そのまま進めば、あたごの後ろを通り過ぎると判断した」との趣旨の話をしている。この時のあたごの船艇状況は次の様になっている。

 
  • 見張り員は10人程度
  • 速度は10ノット(時速18キロ)
  • レーダー員が複数の漁船の存在を画面上で把握しながら、危険性が無いと判断し追跡していなかった

イージス艦前方に2隻発見

3時58分

清徳丸の船長は船首の吉清治夫さんから、イージス艦と見られる船に「ライトをつけられた」と光で合図されたことを無線で伝えたられた。
漁船の乗組員同士で「ライトをつける」というのは、海上衝突予防法に定められた警告信号である。防衛省記者会見ではこのライトについて「確認できていない」としている。

4時

あたご、当直交代。レーダー要員を含む26人全員。

4時頃

清徳丸の3キロ前方を航行していた幸運丸、イージス艦に約5キロまで接近、イージス艦がなおも直進してきたので右にかじを切って回避した。清徳丸より約25分遅れて出港し、清徳丸の後方に位置していた金平丸も、前方からイージス艦が向かってくるのを確認。左前方からきたイージス艦と3.6キロまで接近したところで右にかじをきったが、「かわせない」と判断。Uターンするように左に切り返し回避した。

金平丸「なんとかやりすごした」「かじを切った瞬間、イージス艦の明かりがパッとついた。自分たちの船に驚いてつけたのかと思った

4時5分

あたごの見張り員が、別の漁船が前方を横切った際に、進行方向右側に緑色の灯火に気付く。

小型漁船安全規則によるとマスト、船尾、全周灯は白色の灯火を、左舷灯は「赤」、右舷灯は「緑」の灯火を装備することになっている。清徳丸は昨年12月に臨時検査を受けており、日本小型船舶検査機構は「整備は全く問題なかった」としている。双方の位置関係を検証すると、あたごからは左舷側の「赤」が見える可能性があり、緑とするあたご乗員の証言はおかしいと僚船の乗員。この食い違いについては、見張り員は進路を切り替えた金平丸の緑灯を見た可能性がある(画像中A地点)。

イージス艦と漁船の経路

見張り員は海自の調べに対し、「事故2分前から衝突までの間、清徳丸が右からあたごの進行方向に向かっていることを示す左舷の赤い灯火は一度も視認していなかった」としている。 つまり、清徳丸の針路については、最初に視認して以降完全に見失った可能性が高い。衝突直前にかけた急制動に関しては、清徳丸とは別の漁船が接近していたと認識したため、とっさにかけたとの見方を強めている。

4時6分

あたご、自動操舵から手動操舵に切り替え急制動をかける。清徳丸もあたごの前方100メートル先で大きくかじを右に切った。

この時あたごの乗組員は「清徳丸と衝突する直前、短い警笛を5回鳴らした」と話している。あたごの場合汽笛は低音で相当の音量とみられるが、現場海域にいた他の漁船は「警笛は聞かなかった」と証言している。

4時7分

あたごと清徳丸衝突
この時、金平丸船長はあたごが照明をつけて停船したのも目にしたが、「自分の船を見て止まったのか」と思って、衝突が起きていたことに気づかなかったという。

4時23分

第3管区海上保安本部へ、あたごより「本船と漁船の清徳丸が衝突し、清徳丸が二つに割れて浮いている。人員等は見当たらない」と通報。

5時頃

海自横須賀基地に入港。自衛隊から防衛省内部部局に連絡。
艦首右側に清徳丸のものと見られる白い塗料が付着し、数本の細い傷が斜めに走っているのが確認された。艦首左側には目立った傷跡は見られなかった。

20日の横須賀海上保安部の調査によれば、あたごの艦首先端部の塗料が縦3メートル、幅10センチにわたってはがれ落ち、鋼鉄の地金が露出している。あたごが清徳丸の左舷に向かって直角方向で進行し、先端部で船体を真っ二つに裂きながら、かなりの衝撃で一気に衝突したとの見方を強めた。

5時40分

部局から秘書を通じ石破防衛相に報告。

6時頃

金平丸僚船らに無線で事故の知らせが入る。

回避の可能性

見張り員が灯火を確認したときに、回避行動を取っていれば、衝突は避けられた可能性が高い。

責任の所在

衝突直前は、あたごが清徳丸を右に見ており、あたごに回避義務があった可能性が強い。

事故の原因について推察

海上衝突予防法では、2隻の船が互いの航路を横切る場合、相手を右に見る方が相手の進路を避けなければならない。しかし、実際には小回りの利く小型船が大型船をよけるケースが多いという。今回のケースにおいても、あたご側は漁船の方が避けてくれるという予断があったのかもしれない。

今回事故となった海域について、「自動操舵は大海原でほとんど目標がないところでセットするもの。この海域は漁船や遊漁船が多い。沿岸部では手動に戻すべきだ」といった声が船舶関係者や海自内からも上がっており、この海域に慣れていないのではないかという見方がある。

事故の直前に当直交代をしており、その際の引き継ぎがうまくされなかったことも要因の一つのようだ。ある海自幹部は「通常は安全が確保されるまで交代しない」と話しており、交代した全員が漁船について危険性は無いと判断していたと思われる。

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